ふじ美4年生 母の日 晴れ
姉の部屋の押し入れの奥からこのノートが出てきたとき、
わあーっと私を取り巻く空気が回転しながら50年前にワープした。まるで私は映画でも見ているかのように、その短編ストーリーに入り込む。
入退院をくり返している父親が帰ってきた。母親は小児まひの姉を連れて付き添っていたから、この日は久しぶりに家族でそろうパーテー(パーティー)。笑う声。歌う声。手をたたく音。乾杯のコップのカチンッ。
目の前の映像が消えた時、はっと我に返った。
涙が一すじ流れる。スぅーっと力が抜ける。
大事な人の魂はいつでも私の中にいるんだと気が付いた。
心のよりどころを文字にして、爆発する気持ちを治めていたかのような間違えだらけでへたくそな字。先生に見せるわけでもなかっただろうこのノート。その時の私は、50年後の私がこんな風に見るなんて思うはずもない。
愛されたこと、大切に思った気持ち、時間がたってもよみがえるあたたかいもの。それが家族。
時には疎ましく感じるその空間は、決していらないものではない。絶対に絶対に 大事なものなのです。